メモ

2023年10月

30日 1

村上春樹さんの『街とその不確かな壁』。うーん……全体としては、あまりおもしろくなかったな。少し書いてみる。

登場人物が、書き割り的というか……。なんだか、あまり思い入れなく描かれているような気もした(とくにイエローサブマリンの少年の扱われ方は少し違和感)。物語も、力強さというかダイナミズムというか、そういうのを感じなくて、少々こぢんまりとしている印象。たとえば『海辺のカフカ』とか『1Q84』とかは、そんな感じはなかった。振り返ってみると、1つ前の長編『騎士団長殺し』から、なんとなく上述のような感触があった気がするが、今回は、その傾向がさらに強まったように思える。1部はまとまっていたけど、2部は冗長で迷走ぎみに感じたし、逆に3部は簡単すぎて物足りない感がある。これは本当に物語の終わりなのかなとも思った。もしかすると、ここまで書いたことは実は作者が自覚的に行っていることかもしれない。

その一方で、個々の表現は、本当にクリアというか、切れ味がよくて、実に鮮やかだなと思った。もう人物とか物語とかよりも、そのつどの表現の連なりに身を任せていくのがよいのかもしれない。

ただなあ、なんというか、もう相当な年齢なのに、どことなくこじらせているような……。いや、あくまで個人の感想です。

# 読書